借金の取り立てに向かう凶悪な三人組。

夜の2時ごろ、飲み屋街をゆっくり走っていると手が上がった。車を停めると4人組みの男たちが乗ってきた。年齢は全員60歳くらい。後ろに3人、助手席に1人座った。

「はい、どうぞ。どちらまででしょうか。」

と聞くと「H市まで。」と言う。H市というと、隣の隣の市だ。

ちょっと長い距離なので嬉しくなった。しばらく走っていると、車内の雰囲気がちょっとおかしい。どうも4人の中の1人が責められているようなのだ。

会話の内容からして、その1人が残りの3人に金を借りていて、それを返さないから、今からお前の実家に取りに行く、ということになったらしい。その実家というのがH市なのだ。

40分くらい走ってH市には着いた。だが、その「実家」というのは責められている本人しか知らない。

大きい交差点にさしかかった時、残りの3人が「この道、どっちや! 右か左か!」と聞いても黙秘権を行使して黙ったまま。運転している自分も困る。

「ど・・どうしましょうか。取りあえず停まりますね。」

と言って、たまたま駐車場が近くにあったので、そこへ車を停めた。

後ろの方で揉(も)め始めた。自分はあくまでも前を見て、後ろを見ないふりをしていた。

「お前の実家はどこなんやと聞いとるだろうが。」
「案内せぇや。」
「・・・・・。」(←返事をしない)

「どこやと聞いとんだろーが。」
「・・・・・。」(←まだ返事をしない)

その3人もだんだん怒りだした。

「お前、家の場所喋らん気か!」
「道案内せえと言うとるだろーが!」
「殺すぞ!コラァ!」

後ろから怒鳴り声が聞こえてくる。何回場所を聞いても、その1人は黙ったままだ。そのうち「ゴツッ」という音が聞こえてきた。どうやら殴られたらしい。

続いて「パンッ」という音も聞こえてきた。今度は頭をしばかれたようだ。

「いつまで黙っとるんじゃ! おおーっっ!」
「まだ痛い目に会いたいんか、コラァ!」

この勢いは止められそうにない。今度は「カチッ」という、ライターをつけた音が聞こえた。間髪入れずに「熱ぅーっ!」と悲鳴が上がる。ライターで手や顔をあぶりだしたのだ。

これまで黙っていたその男がやっと声を発した(発した声は悲鳴だったが)。

しかしそれでも道案内しようとしない。とうとうその3人もキレて、

「わりゃ、ちっと降りぃーっ!」と言って、3人が車から飛びだした。後ろの座席のドアを開け、その男の服をつかんで車から引きずり降ろした。

座った状態から思いっきり引っ張っぱられて、その男は車外へ転がり落ち、駐車場に横たわるような格好になった。そこへ今度は3人が囲んでキックの雨あられだ。

「わりゃ、ええ加減にせぇよ!」「まだ喋らん気か!」

ストンピングとサッカーボールキックの連打。本気で蹴っているのが見た目にも分かる。

ボスッボスッという音と「はぅっ」という悲鳴が交互に聞こえる。目の前で殺人が起こる予感がした。ちょっとこれはまずい。さすがに見かねて止めに入った。

「ちょ、ちょっと! それ以上やったら死んでしまいますよ!」

自分が止めに入って何とかおさまったようだ。その1人もとうとう諦めたのか、やっと道案内をし始めた。

またその4人組みを車に乗せて発進した。今度は案内される通りに運転し、とうとうその問題の実家に到着してしまった。

「おう!邪魔するで!」と言いながら、その3人組みはズカズカと、その実家に上がり込む。

家の人が慌てて出てきた。案内してきた人を交えて、何か奥の方で話し合いらしきものを始めた。

ちなみに自分はまだ料金をもらっていなかったので、一応その家までついて行って、玄関でボケッとつっ立っていた。

しばらく経って奥の部屋から3人が出てきた。
「明日までに50用意しとけよ!」
「こっちは30じゃけーの!」

・・・50万と30万のことだろうか?

その3人組みは「警察呼ぶんなら呼んでみぃや! どっちが正しいことしとるか、分かっとるんか!」
とも言い放っていた。

更にあつかましいことに、その3人は玄関近くに置いてあったソファーにどかっと腰をかけ、

「おばちゃん、灰皿!」とか「ビールくらい出せーや!」

などとも言っていた。

この後すぐ、奥の方から娘さんらしき人が出てきて、

「うちの人が迷惑をかけたことは認めますけど、今は夜中ですから、大声は勘弁して下さい・・!」

と、涙声で訴えていた。なんかこっちの心まで絞めつけられる気がしてきた。ちなみにタクシー料金の一万円は、この攻め込まれた実家の人が払ってくれた。

金の請求にまつわるトラブルに身近に接し、何とも言えない気分になってしまった。

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