後ろの車を振り切って!

とある知り合いの、飲み屋の女の子から携帯に電話がかかってきた。

「もしもし、私なんですけど、すぐ来れます?」と聞くので
「あ、はい、空車ですのですぐ行けます。」
と言うと、
「○○公園のトイレの中にいます。」
と言う。

目印で公園のトイレの前にいますというのなら分かるが、「トイレの中」という。

「トイレの前に着いたら電話して下さい。」
と言うので、言われた通りトイレの前に車を停めて「到着しました。」の電話をすると
「すぐ出ますからドアを開けて待ってて下さい。」と返事が返ってきた。

後ろ座席のドアを開けるとすぐにトイレの方から走って来る足音が聞こえて来た。電話をかけてきた女の子である。

車まで走ってきたかと思うとそのままヘッドスライディングをするような形で車の中に滑り込み

「ドア閉めて!早う、発進して!」

と、小声ながら焦った言い方で言うので、すぐに発進した。女の子は後ろ座席に横たわったままである。まるで隠れているような体勢である。

「後ろから車がつけてきてない?」

と聞いてくるのでルームミラーで後ろを見ると、一台の車が後ろを走っている。

「一台いますね。ついてきているかどうかは分かりませんが。ちょっと何回か、曲がってみましょう。3回ほど適当な所を曲がってみた。

それで後ろの車は・・ついてきている。
「ついて来てますね、後ろの車。」

「やっぱり!逃げて、後ろの車を振り切って!」

「はい、追われてるんですか?」

「店のお客なんですよ!すごくしつこくって!家まで来るとか言い出して!何とか逃げ切ってもらえますか!?」

「はい、やってみます。」

一応はいとは言ったが、たいしてドライビングテクニックがあるわけでもないし、国道に出て思い切り飛ばしてもとても振り切れる自信はない。どうすれば逃げ切れるか。。

バックミラーで見てみると、暗いのでよくは見えないがわりと車高が高い。バンかステップワゴンのような、大きな車のようだ。

逃げ込む場所として思いついたのが、この近くにある普段行きたくない、狭い道ばかりの住宅街である。

車が一台やっと通れるような道路ばかりで急な坂が多い。相手のは大型のようなので、こういう狭い所へ逃げ込めば振り切れるかも知れない。

その住宅街までは5分くらい。とりあえずそこを目指した。後ろの車は完全に着いてきている。

その住宅街に着いて細い道路が始まった。その中でも、振り切れるならここ、という自分が考えていたポイントが来た。車一台がやっと通れる幅で両側に家の壁が続く場所。しかも結構なカーブになっている。うっかりすると、どっちかをこすってしまいそうな場所である。

普段は慎重に通るのだが、今はそういうことは言ってられない。かなりのスピードでここを駆け抜けて、少し引き離した。

このカーブを抜けると細くて曲がりにくい十字路があちこちにある。普段は通りたくない十字路や三差路ばかりを目指して右に左に曲がっているとついに後ろの車を感じないような状態になった。

自分の地理の知識を総動員する感じでこの住宅街の嫌な道ばかりを通って大回りし、こっちの道路から入ってあっちの道路に抜けるという形でこの住宅街を脱出した。

広い道路に出た後も信号を避けて裏道を通り、何とか振り切れたようだ。そのままこの子を家まで送ってやっと終了。結構な金額になったが払ってくれた。

相手に車の番号などは見られているはずなので、会社の方に何か言ってくるのではないかとちょっとヒヤヒヤしたが、何事もなく数日が過ぎたのでもうこのまま終了だろう。やれやれだった。

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