因縁つけてきたお客は降りた後、転んで血だらけ

飲み屋街で、60才前後の男を乗せた。乗る前からふらふらしており、相当酔っぱらっているのが分かる。
顔つきが見るからに因縁つけてきそうな感じだったので嫌な予感はしたが、走り出すとやっぱり文句を言い始めた。

「もっとゆっくり走れ!揺れるだろうが!」

「何かしゃべれ。何か面白い話しろ。」

「お前、『はい』しか言えんのか!」

「接客態度がまるでなってねえんだよ!」

「客を楽しませるのがサービスだろうが!」

といった感じ。それでもどうにか道を聞いて家の前まではたどり着いた。

金を払う間も

「今度見かけたらタダじゃおかん。」
「もう二度とお前には乗らん。」

などと、まだ言っていたが、やっと降りた。

だがこの男は車から降りて2-3歩歩いたかと思うと、とたたたたっと足がもつれて、前のめりにどっしゃあんと転んでしまった。

転んだのは見えたが、これ以上関り合いになりたくないので無視して発進することにした。

その家は、道の突き当りに位置している家で、そこに頭から突っ込んでいたので、そのまま広い道までバックするか、この場で方向転換しないとここからは離れられない。

幸い両側が少し広いので、何回か切り返せばUターン出来る。

ちょっとずつ車を進めたり戻したりしながら方向転換していると、突然後ろのドアがバンバンバンバンと叩かれ、さっきのお客がいきなりドアを開けてきた。

「病院連れて行ってくれーっ!病院!」

と、こっちに向かって叫んだ。

見ると額(ひたい)から血がどくどくと流れている。更に別の個所からも出血しており、手でこすったのか顔のあちこちに血でこすった跡がある。

血だるまというほどではないが、結構な出血である。

どうやらさっき転んだ時、顔面を打ったみたいだ。

「血が出とんじゃーっ!もう一回乗せてくれ!病院連れて行ってくれ!」

と叫ぶので

「乗せたらまた文句言ってくるから嫌ですよ!」

と断ると

「文句言いません!何も言いませんからお願いします!」

「ここから病院までのお金もちゃんと払ってくれるんですか?」

「払います!お願いします!」

というので、しょうがなしに乗せて夜間受付窓口がある総合病院まで連れて行った。さっきまでとは態度が一変して、随分と低姿勢になっていた。

病院に着いてから一応降りて一緒に病院の中に入った。この病院は昼間の受付と夜の受付の場所が違う上に、夜の受付は建物の中に入って結構歩かなければならない。

場所を知らない人だったらちょっと困ってしまうようなところに夜間受付があるので、一応案内してやったのだ。別にここまで面倒みてやる必要もないんだが、しょうがない。

自分が受付に言って話をして、連れてきた、あのタチの悪い男を紹介すると受付の人が

「名前と住所をお願いします。」

とその男に聞いた。

すると男は

「なんでワシの名前と住所を言わなあかんのじゃ!そんなもん、個人情報だろうが!」

と受付の人に絡(から)み始めた。

「それを聞かないとカルテが作れませんから。」

と言っても

「プライバシーの侵害じゃねーか!」

とさらに怒る。

自分も見かねて

「名前と住所をしゃべらないと、これ以上話が進みませんので、ずっとこのままになりますよ。」

と言うとやっと受付の人の質問に答え始めた。

この間に、自分の方は別の受付の人に

「すいません。あと、よろしくお願いします。僕は帰りますので。」

と言ってすぐに病院を立ち去った。

本来ならこのまま治療の終わるのを待って再び家まで送るべきだろうが、もうここまでやったらいいだろう。うかつに乗せたらまた因縁つけてくるかも知れないし。

しかし病院の人に押し付けてしまったようで、何か悪いことをしてしまったような感じがした。

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