酒に酔っての出来事・ケンカしたことを忘れる
Aさんは60代前半の独身で、ある飲み屋の女にずいぶんと惚れていました。相手の女は50代後半です。
Aさんはその女に家電品を買ってあげたり小遣いをあげたり、更には、その女が携帯のブラックリストに載っていて携帯を持てないということで、Aさんが代わりに携帯を契約してその女に使わせてあげたりもしていました。もちろん携帯料金はAさんが払います。
そんな感じでかなり貢(みつ)いでいたのですが、ある日偶然、その女性に別の男がいることを知ってしまいました。
今まで単なる金づるにされていただけだったことを知ったAさんは激怒しました。Aさんは女にくってかかり、
「これまで買ってやったものを全部返せ!」
と怒鳴り散らしました。
「もう二度とお前の店なんぞ飲みにいくか!ワシの目の前に一生現れるな!」
とも言うと、女の方も売り言葉に買い言葉で激しいケンカになり、2人は絶縁状態となりました。完全に破局です。
ところでAさんは酒にとても弱いのです。ビールをコップで5~6杯飲んだら、泥酔し、次の日には何も覚えてないほど酔っ払います。こういう人も珍しいです。
そのAさんが、しばらくしてまた飲みに出ました。当然あの女の店などに行くはずもなく、違う店で飲んでいました。
しかしビールだけで泥酔状態となったAさんは、あの女とケンカ別れしたことなどすっかり忘れてしまい、その店を出た後、あの女のいる店へと再び行ってしまったのです。
びっくりしたのは女の方です。あれだけボロクソに言って、お互い怒鳴り散らしたケンカをやっておきながら
「やっほーっ」
とか言って店に入ってきて、まるで今まで通りに話しかけてきます。
「おっ、今日も綺麗だねぇ。」
とか言いながら。
その女も他のお客の手前、怒って追い出すわけにもいがず、しかたがないので、普通通り相手をしました。
そして次の日、Aさんは、ケンカ別れしたはずの女の店に再び飲みに行ってしまったことも、いや、どうやって帰ったのかも覚えていませんでした。
いつも一軒目の途中から記憶がなくなり、目が覚めると家にいるというパターンです。
ですが、あの日あの時、その店には、たまたまAさんの会社の同僚が飲みに来ていました。あの女の店で、Aさんはその会社の同僚とも話をしていたのですが、もちろんそれも覚えていません。
後日、その同僚が
「おととい、○○の店で出会ったね。」と会社で話しかけてきて、その同僚に話を聞いて、自分がその店に再び行ってしまったことを知ったのでした。
シラフに戻るとAさんは再びあの女と絶縁状態となりました。でも酔うと次はどうなるかは分かりません。