飲むのが仕事というホストの実情。

ホストクラブでホストをしているお客さんから携帯に電話がかかってきた。

「もしもぃ~・・。俺なんすけど、すいませんが店の前まで迎えに来てもらえませんかね・・。」

かなり酔った感じの喋り方だった。時間からして仕事が終わって家に帰るのだろう。「はい、分かりました。今セブンイレブンの前にいますので、1分以内に行きます。」

と言って電話を切ってすぐ発進した。たまたますごく近くにいたので、路地を二つ曲がって30秒くらいで着く予定だ。

二つ目の角を曲がると、進行方向の道路で、

「道路に仰向けに横たわっている人間」

を発見した。

車道と歩道が分かれていない細い道路なので、その人が寝ている場所はもろに車の通る部分だ。

それはさっき自分に電話をかけてきたホストのお兄さんだった。すっげー危ねー。注意力散漫な奴だったら多分、轢(ひ)いていくぞ。

自分が近づくと、一応自力で立ちあがりはしたが、やっぱり完璧に酔っている。電話をかけたのもやっとという感じだった。倒れ込むようにタクシーに乗り込むと、

「い、家まで~・・。」

思ったよりは喋れるのでちょっと安心した。

だいたい彼は毎日全力投球なので、こういう状態になることはしょっちゅうだ。出勤前に家に迎えに行った時も

「あー、酒が抜けてねぇ・・。身体がだっるぅ・・。気分が悪ぃ~・。」

と言いながら出勤し、帰りに迎えに行った時にはふらふらしながら店から出てくるのが普通のような人である。

詳しくは知らないが、以前酒で内臓を悪くして、入院の経験が2回ほどあるらしい。

彼の家まで走ってだいたい5分程度の距離である。走り出すと、

「あー、しんど・・。めっちゃ酔いましたよ、今日も。」と一応会話は出来る様子だった。

「大丈夫っすか?毎日かなりキツそうですけど。」

「いや、俺ら、客にボトル入れさせてナンボですから、客のボトル、ガンガン飲まないと。ソッコーで空けて次のヤツ入れさせなきゃなりませんからねぇ。

でもまあ、以前に比べれば同じくらい飲んでも、わりと意識はしっかりしてるんすよ。今、友達から『酒に酔わない薬』っていうのを買ってて、これが結構効くんですよね。」

「『酒に酔わない薬』ってのがあるんですか?」

「そうそう、包み紙は真っ白で何も書いてないんですが、結構いいですよ。どこの会社が作ってるのか・・、いやだいたい日本の薬かどうかも分からないんですがね。」

「へぇ、そうなんですか。」と返事はしたが、なんかそれって、かなりヤバくない?

身体にすごく悪そうな気がしてならないんだが、あえてそういうことは口にしなかった。

家の前に到着すると、ふらふらとした足取りで降りて行った。彼はいつかまた入院するようなことになるような気がしてならない。

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