超危ない男。命の危険を感じた。

ある夜、無線配車で一軒のカラオケボックスに当たった。到着して店に挨拶してちょっと待っていると、50歳くらいの男が乗ってきた。
その男は座席に座るとすぐに、「おう、この車テープはどこや? どこかにテープが仕掛けられてないじゃろうのぉ?」と聞いてきた。テープとは録音テープのことだろうか。

今は室内を写すドライブレコーダーがついているが、この当時はまだそういったものはついてなかった。
「録音なんてされてませんよ。」と言うと「おう、ならええ。まっすぐ行け。」と言う。
「どちらまででしょうか?」と聞くと、

「ワシがまっすぐ行けと言うたらまっすぐじゃ! わりゃ、客に対して何や、その口の聞き方は! 行き先を言わんと発進せん気か!」と怒りだした。

走っている間も

「お前、客をナメとんか、コラ!」
「赤信号なんか全部無視せえ!」
「もっと飛ばさんかい!」

と言いながら何回もシートを蹴る。一応は黙って運転していたのだが、

「おう、お前ビビッとんかい。心配せんでもワシャ、武器は持ってないわい。それにお前を殺す気なら、乗った瞬間に殺しとるわ。」などと言いだした。

こいつ、絶対やべーよ。酔ってるというより覚せい剤っぽい。しばらく走ってるとやっと「次の信号、左じゃ。」と道案内がきた。

「はい、左ですね。」
「おう、左に曲がったら警察署があるけぇ。警察に近づいた方がお前も安心するだろうが。ヒッヒッヒ。」

すげー不気味な笑いにゾッとなった。

とりあえず左に曲がったら警察署があったので、すぐにそこの駐車場に車を停めた。すると「誰がここに停めいと言うた!」とまた怒鳴り出す。

「警察署が目的地じゃないんですか?」
「警察署は通過するだけじゃ! お前ここでワシを降ろす気か!」
「だから家はどこなんです?」

「ワシの家は岡上じゃ。岡上まで行かんかい!」
「はあ、岡上ですね。じゃ行きましょう。」

と言って再び発進した。するとその途端、

「わりゃ、えらいナメたマネしてくれたのぉ。おお~?」

と言って、今度はYシャツのエリを後ろから引っ張り始めた。

「岡上に着いたら、ラク~にしたるよ。楽しみにしとけや、ヒッヒッヒ。」

また不気味な笑い・・。「到着したら楽にしてやる」とはどういう意味だろう?普通に考えれば殺されるという受け取り方が出来るが。

車から降りて1対1ならともかく、怖いのは、後ろから刃物で刺される場合である。

この男も「1対1ならお前の方が強いかも知れんのお。」などとさっき言ってたし、殺す気ならやっぱり後ろから襲うだろう。

これ以降、「もし殺されたら新聞に載るんだろうか」などということばかり考えていた。

そうしている間にも、後ろからエリを引っ張る力がどんどん強くなってきた。完全に首を絞められている。「ちょっと・・あんまり引っ張ったらぶつかりますよ!」とは言ったのだが、

「うるせーんじゃ、お前は!このまま絞め殺したろーか!おお~!?」と言って思いっ切り引っ張ってくる。すでに呼吸も困難な状態だ。

「ええから言う通りに行けいや! 次を左じゃ。曲がったらすぐ右!着いたら、楽にしたると言うとるだろうが!」とまた言いだした。

あんまり引っ張り続けたもんだから、とうとう一番上のボタンが飛んだ。そのおかげで首がちょっと楽にはなったが。

「ここで停めい!」

と、やっと到着したようだ。同時に手も離してくれた。ここからが緊張の一瞬だったが・・

「1920円です。」と言うと、妙にあっさりと「オラ!」と言いながら2000円出したので、

「80円のお返しですね。」と、お釣りを返そうとすると「釣りはええけぇ、さっさと開けいや!」と言う。

ドアを開けると「お前、今度見かけたら殺したるぞ!」と捨てゼリフを吐いて、最後まで怒鳴りながら降りていった。別に殺されるようなことをした覚えは全くないんだが。

とにかく今日も命はつながったようだ。

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