予知夢。夢で見た火山の大噴火が現実となった。

アメリカのマサチューセッツ州ボストンにおいて、最大の発行部数を誇る新聞である「ボストングローブ紙」 。

1883年の8月、このボストングローブ紙の記者であるエド・サムソンは、その日仕事中ではあったが、つい編集部のソファーの上で眠りに落ちてしまった。

寝ている間にサムソンは恐ろしい夢を見た。それはどこかの島で火山が噴火する夢だった。

凄まじい火柱が上がり人々が逃げ惑う。溢れ出した溶岩が逃げている人々に襲いかかる。島は火の海となり、熱湯となった海へ飛び込んだ人々は悲鳴を上げて息絶える。そんな恐ろしい夢だった。

夢の中で島の場所も分かった。インドネシアのジャワ島近くにある「プラレイプ」という島だ。

目が覚めたサムソンは今見た夢を事細かく書き始め 、リアリティ溢れる文章に仕上げた。夢の話ではあるが、こんなことでも何かの話のネタに使えるかも知れないと思ったからだ。そして彼は原稿に「重要」と記(しる)し、家に帰った。

サムソンが帰った後、編集長がこの原稿を見つけた。一通り読んでみると、そこには火山が噴火し大惨事が巻き起こったことが詳細に書かれていた。

編集長はこれを、サムソンが自分に見せるために書いたものだと思い込み、この原稿を印刷に回して翌日の朝の新聞に載せてしまった。

もちろんこんなニュースを載せたのはこの新聞社だけである。まさに独占スクープ状態だった。夢で見た話なのだから当然と言えば当然だ。

このニュースを見て色んな新聞社から問い合わせが殺到した。 そして図書館からはジャワ島の近くに「プラレイプ」などという島などない、と言う苦情の電話もかかってきた。

よく考えてみればインドネシアのジャワ島とこの新聞社には通信回路はなかった。インドネシアで起こったことが、こんなにスピーディーに、そして詳しく入ってくるわけがないのだ。

そしてエド・サムソン記者が出社してきたので事情を聞いてみると、夢の話を書き留めただけだということが判明した。

ボストングローブ紙は、すぐに重役会議を開き、一面に謝罪広告を載せることを決定した。

だがこのすぐ後、驚くようなことが起きた。ジャワ島の近くの「クラカトア島」で火山の大噴火が起き、エド・サムソン記者が書いたことと全く同じような事態が発生したのだ。

クラカトア島は、島の3分の2が消滅し、30メートル級の津波が発生し、ジャワ島だけで約36000人が死亡するという大惨事となった。

まさに夢で見たことが現実に起こったのだ。違っていたのは島の名前だけだが、これは後に古い地図を調査してみると、クラカトア島の先住民たちはかつてこの島をプラレイプ島と呼んでいたという事実が判明した。夢で見たプラレイプ島とは、クラカトア島の昔の名称だったのである。
まさにエド・サムソンは予知夢を見ていたのだ。


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