誰かが真夜中に家の扉を開けようとしている。

夜中の0時頃、ある一軒家に無線配車でお客さんを迎えに行った。乗ってきたのは50代くらいの女の人。行き先を聞いて出発した。夜中に自宅に呼ばれると、行き先はだいたい飲み屋街ということが多いのだが、この場合目的地は別の一軒家だった。

道案内をしてもらって住宅街を走っていると

「ここで止まって下さい。」と言われたのでタクシーを停め、そこでそのお客さんは

「この荷物を家の中に入れてきますから、そうしましたらまた家に帰りますのでここで待っていて下さい。」

と言ってタクシーを降りて行った。

多分出発したのが自宅だろうから、こんな夜中に訪ねて行く家とは多分、親戚とか仲のいい人とか兄弟とか、そういった人の家なのだろう。

タクシーを停めたのはその目的の一軒家のすぐ目の前。その女の人は玄関に鍵を突っ込んでガチャガチャと開けようとしているが、鍵が合わないのか、なかなかドアが開けられない。
玄関は横に開くタイプの扉だった。

暗くてやりにくいのだろうと思ってちょっとぼけっと見ていたが、それにしても玄関を開けるのにてこずっている。

時々鍵穴から手を離して玄関の開き戸を開けようとしてガチャガチャやっているが鍵が開いていないのだから扉も開くはずがない。

延々と鍵穴に鍵を突っ込んで回らない回らないという作業をやっているみたいだ。そして時々鍵が開いてもいないのに止めて、手をかけて開けようとしている。当然開かない。

車はすぐ横に停めていたのでずっと見ていたが、同じことの繰り返しで、ふと時計を見るともう20分も経っていた。

まじかこの人。20分経ってもまだ鍵が開けられないとは。

ここでちょっと別の動きがあった。

てっきりこの、「開けられようとしている家の人」は留守かと思っていたが、なんと中に人がいたらしい。

インターホンで中の人がしゃべったようだ。鍵を開けようとしていた女の人がすぐにインターホンに口を近づけて

「すみません!ここは小島さんのお宅でしょうか!」と大きな声で叫んでいた。

「あっ、すいません、違うんですね!すいませんでした!小島さんの家をご存知でしょうか!あ、隣ですか、すいませんでした!」

そう言ってその家から離れてすぐに隣の家に向かって行った。

これまで鍵を開けようとしていた家の左側は空き地で、右側には隣の家がある。隣の家と言われれば、この右側の家の方だろう。女の人もその家に向かって歩いて再び鍵を鍵穴に入れて開けようとした。

車をちょっとバックして、その家の前に停めて見ていたが、今度はあっさりと扉が開いて、その女の人は家の中に入って行った。目的である荷物もちゃんと持って行っており、2-3分で家から出てきた。

タクシーに戻ってきてその女の人は
「すいません、家を間違えてたみたいです。だいぶ待たせてしまいましたね。」

と言っていたが、そのぶんメーターが上がったのでこちらは結構嬉しかったのだが、もちろんそんなことは口には出せない。

しかし最初に間違えて20分も玄関の鍵をカチャカチャやっていたり、開き戸を開けようとしてがっちゃんがっちゃん戸を引っ張ったり・・中の人からしたらすごい恐怖だったのではないだろうか。

夜中の0時を過ぎて自分の家を開けようとしている人物がいる・・夜中に20分も開けようとしていてまだ諦めない。中にいる人からしたらそれはそれは恐ろしいだろう。中の人もインターホンで話しかけるのに相当な勇気が必要だったのではないだろうか。

夜中には絶対家を間違えるべきではありませんね。


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