チンピラ風の男が連れの男を怒り始めた理由。

無線配車である焼肉屋にお客さんを迎えに行った。焼肉屋の前につくとすでに店の前に男が2人立っていた。

二人とも60歳前後のように見える。片方はちょっと気が弱そうな顔をしており、もう片方はいかにも性格がキツそうな完全なチンピラ顔と言うかタチの悪そうな顔だった。

そのタチの悪そうな顔の方が手を上げたので、この二人が乗ろうとしているお客さんだということは分かった。

2人のすぐ前に車を停めたが、両方ともタバコを吸っている。多分最後まで吸ってから乗るつもりなんだろうと思って車を停めてそのまま待っていた。

ちょっとして二人ともタバコを吸い終わったらしく、後ろから車の中を覗(のぞ)き込んだので、こちらもドアを開けて

「お待たせしました、はいどうぞ。」

と言うと、二人とも乗ってきたので目的地を聞いて出発した。目的地は繁華街の飲み屋の一軒。

だが出発し始めた途端にチンピラ風の男がもう一人の気の弱そうな男に対し、何か怒っている。すぐに説教が始まった。

「お前、わしはそういうことはするなと言うただろうが!」
「なに、わしに反抗しとんじゃ。わしの言うたことは無視か!ええ度胸しとるの、お前
何様じゃ、こら!」

そんな感じで因縁をつけているような、怒っているような感じだった。言われている方も「すいません、すいません」を繰り返している。

これから二人で一緒に飲みに行くんじゃないのか?
せっかく二人で焼肉屋に来たというのに険悪な雰囲気になって嫌だね。。

しかし、このおとなしそうな人も、よくこんなタチの悪そうな男と一緒に飲みに出る気になったな、会社の上司で仕方のない付き合いか?などと思いながらもこちらも口を挟(はさ)むわけにはいかないので黙って運転していた。

タチの悪そうな男の説教はさらに続く。

「なんでわれ、携帯灰皿持ってきてないんじゃ!吸殻、火のついたまま溝に捨てやがって!
溝が詰まるだろうが!それぐらいのマナーも守れんのか!

わしなんかどこに行くにもちゃんとこうやって携帯灰皿持ってきとんじゃ!わりゃ、マナーのマの字もなっとらんのか!街を汚すなーや、ボケ!」

一瞬ちょっと驚いた。
人は見かけによらないと言われるが、このようなチンピラ顔をした男が吸殻のポイ捨てをするなと人に怒っている。そしてこの男はちゃんと自分で携帯灰皿を持ってきている。

吸殻を投げ捨てたのは、この真面目そうな大人しい人の方だったのか。

それなら言われてもしょうがない。もっと怒られるがいい。
何かとても新鮮な感じがしてびっくりしたが、少し痛快だった。

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