給料がマイナスの社員は、給料日に、逆に会社にお金を払わなくてはならない。
タクシー業界と言ってもこの辺の地域だけかも知れませんが、給料がマイナスになる社員がいます。
売上に対して現金が足らない社員です。毎日一日業務を行って会社に帰ってきた時に日報とともに現金も会社に提出します。
現金は会社に現金投入機という機械があるので、これにお札や小銭を入れるとその代わりにレシートが出てきます。レシートには一万円札が何枚とか100円玉が何枚とか印刷してあって合計金額も一番下に印刷されてあります。
このレシートを日報にクリップで留めて提出します。要するに会社に現金を提出しましたという証明のようなものです。
ところが仮に2万円の現金を入れなければならないところを1万円だけ入れて1万円を自分で持って帰ったりとか、1万5000円の現金を入れなければならないところを全く入れずに日報だけ提出して帰ったりとか、要するに現金の持ち帰りをする社員がいます。
なぜ持ち帰りをするかと言うと普段の生活費が足らないので、給料日まで待てないからです。
持って帰った金額はどんどん給料から引かれます。
自分が以前いたタクシー会社は、全社員が70人ぐらいでしたが、そのうちの15人ぐらいが持ち帰りをする社員でした。
時々給料日前になると「今月の給料マイナス者」ということで、名前とそれぞれの不足金額が貼り出されていました。マイナス10万円とか8万円とかそんなのは何人もいました。
そういった人たちは給料日に給料をもらうどころか、逆にその不足分を会社に払わなくてはなりません。
当時自分は運転手ではありましたが、その会社の管理職でもあって、日々の会社の数字を見ることができました。
個人の実績の「過不足」の欄に「-86000」(マイナス8万6千円)などと書いてありますので、要するに売上に対して現金が8万6千円足らないという意味ですから、持って帰ったなということが分かります。
会社側からは持ち帰りはするなと何回も何回も言っているのですがそれでも持って帰る人間はいます。
仮にそういった人間を全部解雇すると今度は人が足らなくなってしまいます。黙認されていたわけではないのですが、会社の言うことを聞かない人間が多かったと言うかそんな感じでした。あんまり度がひどいと、さすがに解雇されていました。
基本的に売上の半分ぐらいが給料ですから、月の売り上げが40万円ぐらい上がれば20万円ぐらいが給料ということになります。手取りの金額にすれば16万円ぐらいです。売り上げが40万円ぐらいの人であれば、16万円以上持って帰れば給料がマイナスということになります。
マイナスを出せば会社からかなり言われますが、ギリギリプラスになっていればそこまで言われませんでした。
その当時、自分のいた会社では、今月の給料が千円だったという男が給料明細を見せて歩いていたことがありました。
「見てくれや、俺の給料!今月1000円なんでぇ!」と言っていたので自分も見せてもらいましたが「振込額1029円」と書いてありました。この人などはもちろん持ち帰りをしていたわけですが、ギリギリマイナスにならない所を心得ていたようです。
もちろんこんな持ち帰りなどということは他の業界では許されることではないでしょう。売上と給料は、同じ「お金」であっても意味が全然違います。売上を勝手に持って帰って「今月の俺の給料から引いておいてくれ。」なんて通りません。
こういう持ち帰りという習慣もこの会社の悪い習慣でした。この辺の地域の他のタクシー会社でもこういったことがあるといいます。会社がよほど厳しくしないと、この習慣はなくならないでしょう。